Sam Gendel

サム・ゲンデル

LAをベースに活躍する、先進的な作曲家、サム・ゲンデル。ギター、サックスをメインにマルチ・インストゥルメンタル奏者として近年ハイペースで作品を発表し続け、その活動はジャズ、アバンギャルド、アンビエント、エクスペリメンタル・ポップなど複数のジャンルにまたがっている。

11歳のときに50ドルで購入したサクソフォンで音楽をはじめ、シーンには先進的ジャズトリオ「INGA」 のリーダーとして2015年の1stアルバムやローランド・カークの『Volunteered Slavery』を取り上げた演奏が初期のパフォーマンスに挙げられる。

2017年からは個人名義を名乗りギターをメインにヴォーカルやラップも織り交ぜたファースト・アルバム『4444』と路上演奏の即興によるパフォーマンスを収めた『Double Expression』、2018年リズムループとサックスの音響で構築された幻想的なアブストラクト作『Pass If Music』と全く異なる趣のアルバムを発表。LAのジャズ・コレクティブKnowerで同門だったSam Wilkesとの野心的なデュオ作『Theem and Variations』も話題になり、この年「FESTIVAL de FRUE 2018」に出演した。

彼の活動が近年大きくクローズアップされたきっかけは、米名門レーベル・ノンサッチからリリースした『SATIN DOLL』の発表の影響が大きいだろう。伝統的なジャズ・スタンダードを自ら再構築したユニークな演奏は「ジャズ・スタンダードの未来形」や「アメリカーナ・サウンドの現在進行系」といった様々な解釈を呼んだ問題作となった。

サムは、自身の作品に加え、コラボレーション作でも非常にハイペースでリリースし続けているミュージシャンとしても知られる。近年だけでも個人名義、レーベル毎の趣向の違い、コラボレーション企画含め余りにもレンジが広すぎるので近年のものから一部だけ紹介したいと思う。

2022年、ジャズとアンビエントへの傾倒をさらに追求した34曲の大作『Superstore』と『blueblue』を立て続けに発表。12歳のシンガー、アントニア・サイトリノヴィッチと『Live a Little』でコラボレートし、ジャズとメルヘンチックでポップなソングライティングを融合させた。

2023年のアルバム『Cookup』では、ゲイブ・ノエルとフィリップ・メランソンと共に、90年代から2000年代のR&B/ソウルのヒット曲を再解釈、音と視覚オンラインとリアルの世界を行き来するマルセラ・シトリノウィッツによるアートブック付きの『Audiobook』、さらにはポスト・クラシカルの気鋭ユニットバルモレイの作品での共作。日本国内に目を向けると、ギタリスト笹久保伸との即興によるコラボ、さらに折坂悠太の「炎」にフィーチャーや岡田拓郎や星野源の作品ほか日本人アーティストとの共演、客演も増え続けている。

2024年、すでにホームページの片隅でひっそりと発表されたトラック『Landscape 1』を皮切りに、過去のファビアーノ・ド・ナシメントとのコラボレーション『The Room』の再発売、ルース・ガルバス、サム&メランソンのジャズとインディ・ロックの間のような不思議なニュートリオ「アース・フラワー」名義で3月にアルバムをリリースと続く。

半端ないアウトプットのペースはとどまることを知らないが、最近では定期的にコラボレートしている盟友サム・ウィルクスとのデュオによる第3弾アルバム『The Doober』がリリースされたばかり。このアルバムは『FESTIVAL FRUEZINHO 2022』での演奏を皮切りに日本国内を回ったツアーで録音されたトラックが大半を締めている。

すでにFRUE/FRUEZINHOにとってレジデンスアーティスト的な印象もあるサム・ゲンデルだが、繰り返し出演し披露した演奏全てに一ミリの被りもなく組み合わせやユニットのフォーマット含め”ジャパンプレミア”といえる初出のものばかり。今回のファーナ・モリーナとの世界初コラボも間違いなく刺激的な内容となりそうだ。

Text By Hideki Hayasaka